私自身の生活や現代社会と照らし合わせて活かせる部分が多いと感じたので記事にしました。各登場人物・価値観を考察も踏まえつつ書いています。
『千と千尋の神隠し』は、
評価や欲望に飲み込まれやすい社会の中でどう自分を失わずに生きるかを描いた作品。
働くこと、お金、欲望、依存、心の豊かさ、感謝。
それらを構造として見せているところが凄さだと思っています。
自分を見失うとは
・社会からの評価
・欲望
・愛情
・お金
・力
これらは本来、人を支えるものですが、
価値観が欠如した(自分がない)状態で
評価やお金などを手に入れようとすると自分を見失います。
「自分がない」とは、
自分の意見や考えが持てない、自己主張が苦手、他人に過度に合わせる、感情を抑え込む、他人任せの状態。
自分がないとどうなるか
- 何をしても満たされない
うまくいったはずなのにどこか空っぽ。手に入れても、すぐ次を探してしまう。 - 自分から行動できない
何のためにやっているのか分からず、続けられない。 - 評価がないと不安になる
お金、肩書き、他人の反応が自分の価値そのものに感じられてくる。 - 人との距離が分からなくなる
嫌われないように合わせすぎたり、
逆に、力や成果で相手をコントロールしようとしたりする。
「自分がない」状態になると、
欲望や評価を使って、存在を証明しようとする。
評価やお金にとらわれすぎるとどうなるか
- 走り続けて突然動けなくなる
無理を重ねた後、燃え尽きたように何もしたくなくなる。 - 大事なものが後回しになる
お金や評価を最優先し、
家族・友人・健康・個人の成長といった他の重要な側面をおろそかにする。 - 人間関係がうまくいかない
「これくらいならいいか」と自分でも気づかないうちに人を傷つけてしまう。 - 安心できる瞬間がなくなる
失う不安や比較が止まらず、手に入れても落ち着かない。
登場人物と現代社会の解説
カオナシ
カオナシは顔(自分軸)がない存在として描かれ、お金の世界では満たされず、
本当の自分の居場所を取り戻す過程が描かれています。
偽物の砂金を作り出し、人から評価され認められ、自分の居場所をつくろうとする。
でも、千尋は砂金を受けとらない。「さみしい…」とカオナシが言う場面。
優しくしてくれた千尋に評価してほしいのに評価してくれない、、、
自分の居場所はどこにあるのか分からなくなり、自分を見失い暴走する。
その後、取り込んだ青ガエル(他人軸で抱え込んだもの)を吐き出し
冷静さを取り戻します。
千尋と共に銭婆(湯婆婆の双子の姉)の家を訪れ、
魔法(お金や評価)にとらわれない銭婆のもとが心穏やかに過ごせる居場所となります。
ハク
ハクは本来、川の神であり、
幼い頃の千尋が川に溺れかけていた時に助けました。
その後、川はマンションで埋められ神の力を失いました(自分を失う)。
元の自分に戻りたい、力を持ちたいという思いから、
湯婆婆のもとへ行き、魔法を学びます。
力を手に入れる代わりに、名前を失い自分を忘れていく。
千尋との関わりの中で、名前を思い出し、自分を取り戻します。
千尋
油屋という社会の中で、湯婆婆から名前をとられ
自分を見失いそう(名前を忘れそう)になります。
それでも、名誉やお金、人からの評価に気を取られることなく、
元の生活に戻れることを願い、その場で必要な行動を選び続けます。
その結果、最後にお父さんお母さんは「ここにはいない」と判断でき、
元の生活へ戻ることができました。
湯婆婆
湯婆婆は、役に立つ・従順に従う人へ過剰な愛を注いでいる愛情深い人物。
坊に対して愛を注ぐ描写や大量の汚物でドロドロに匂うオクサレ様(河の主)を本来の美しい姿に千尋が戻した時に「よくやったね、大儲けだよ!ありゃあ名のある河の主だよ。みんなも千を見習いな!」と抱きつき褒めています。
逆に油屋に急にやってきた見ず知らずの千尋に対して冷たくあしらっている描写や従わないハクに対して「それでお前はどうなるんだい。そのあと八つ裂きにされてもいいんかい。」と切り捨てるようなシーンもあります。
つまり、過剰な愛による”過保護”と”極端な切り捨て”を行き来する不安定なもの。
名前を奪い、人を操作し、
個性を必要としない従順な人を周りに置いている。
坊
湯婆婆の過剰な愛情と保護を受けて育ちます。
坊の巨大さは「成長の停止」や「依存」の象徴として出ています。
「おんも(外)には悪いばいきんしかいないんだぞ。おんもにいくと病気になるからここにいるんだ。」と”外の世界は危険”という教育を受けていることが分かります。
銭婆に姿をネズミに変えられ、千尋と行動し外の世界を知っていく。
ネズミの姿から元に戻れる状態になっても、すぐに元には戻ることをしなかった。
それは、外の世界を知り”依存”や”成長の停止”から抜け出したことを表していると考察。
湯婆婆:『1人で立てるようになったの?』 → 成長している
坊:『ばあばのケチ。もうやめなよ』 → 親離れしている
銭婆
銭婆は、魔法(名誉やお金、評価)に頼りきらない生活を送っている。
魔法はこの世界では、早く、便利、強い。
でも同時に、名前を忘れやすい(自分を忘れやすい)力でもあります。
作中では、千尋・カオナシを迎えカオナシに「あんたはここにいな」と居場所を与えており、優しい場面が多い。
一方、釜爺が「銭婆の所へか?あの魔女は怖えーぞ。」というシーンやハクが「魔女の契約印」を銭婆から盗んでくるのですが、ハンコにかけられていた呪いによって命を食い荒らされ、式神の攻撃を受けて傷だらけで戻ってくるシーンがあります。
つまり、優しさもあり、敵にまわすと容赦ない人物ということ。
精神面の成長
この作品を通して感じる精神的な成熟のゴールは、
社会の中で自分を見失うことがあっても、
「自分」を取り戻すことができる状態に見えます。
- 感情が一時的に乱れても戻れる
- 自分の欠点を責めない
- お金や評価、欲望、力を制御する
- どうなっても大丈夫と思える


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